今週の為替市場は、米雇用統計の改善を好感したドル高ならびに円全面安が続くのかどうかを見極める1週間となりそうだ。 そんなドル高、円安にはいわゆるファンダメンタルズ要因も当然寄与しているが、それに加えて日米など金利差の問題もある。実際、日米の短期金利差はこれまで円が優位な方向性にあったものの、それが逆転し再びドル優位へと変わってきた。また、日本の財務省が「外為特会(外国為替資金特別会計)」の借入限度額を引き上げるとしたことが、とくに海外勢を中心に円売り介入がしやすい環境になった−−などとする思惑を呼んでいた面もあったという。
テクニカルに見た場合、先週にはザラ場ベースで一時88円半ばの直近安値を下回ったものの、長期間定着することはなかった。まだ断定は出来ないが、取り敢えず下値を固めてきた感もある。90円前後に位置する移動平均の21日線、あるいは先週に再び回復した一目均衡表の先行帯の雲の下限(89.30円)を維持する限り、強気な見通しで良いのかも知れない。そんなドルの上値メドは、まず一目均衡表の雲の下限が位置する91円前後になり、超えると92円前後がターゲットか。同レベルには移動平均200日線のほか、昨年のドル高値101.45円を起点とした下降トレンドラインが位置しており、かなり強い抵抗になりかねない。
一方、材料的に今週は1週間を通してそれほど大きな要因が見られない。 先々週にはネガティブ・サプライズが相次いだことに続き、先週末には逆に米雇用統計のポジティブ・サプライズが観測されるなど、ここ最近は相場の波乱要因となっている米経済指標も今週は週末に掛けて1月貿易収支(11日)、2月小売売上高(12日)などが発表されるに過ぎない。ただし、11日には中国で2月の小売売上高や同鉱工業生産などいくつかの指標がまとめて発表されるだけに、そちらの内容には注意する必要がありそうだ。 また、同じ中国ファクターと言うことでいえば、前週末からの全人代開会を受けた追加引き締め観測なども聞かれている。中国に関する話題が今週は相場の波乱要因になる可能性もあるため、是非とも関連する報道などには注意を要したい。
続いて注目されるものは、大局的な需給要因。前述したように今週は目立った材料がないものの、需給的にはたとえば3月期末をにらんだリパトリなどが活発化する時期でもある。 なお、リパトリに関連し忘れてはならないのは、「日本版・本国送金法」と言われる税制の優遇措置が影響だろう。一部外銀の試算などでは例年よりも資金還流が多そうとされるものの、先日の日経新聞ではマーケット欄で「年度末の円買い不発?」と題したうえで、「日本版・本国送金法」の影響は予想よりも軽微なものに留まるとの見通しを示していた。いったいどちらが確かなのか、リパトリに関しても為替市場の動きを左右しかねない要因となるため、動静をしっかりと見極めたい。
P.S. 日々のドル/円のストラテジーは「為替一家の華麗なるFX生活」にて。
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