今週の為替市場は、クロスを含めた円全面高の継続性を見極めることがポイントになりそうだ。為替市場は欧米を中心とした株価との連動性が強く、リスク回避による円買いが取り敢えず優勢ながら、オーバーシュート的な色彩もうかがえるようになってきた。突っ込んでの円買いには注意が必要かも知れない。もっとも、輸出企業などはとくにユーロ/円を大きく売り遅れているとされ、戻りは確実に抑えに来る方針。そう考えるとクロスを中心にドル/円も上値は非常に重いイメージになる。
テクニカルに見た場合、日足チャートに示された下ヒゲの長さなどから今月6日に記録した年初来安値の87.96円で大底を打ったと考えていたが、先週の再下落でドルは再び年初来安値に接近あるいは更新する可能性も否定出来なくなった。目先のドル安値である89円レベルを再び割り込むようだと、年初来安値の87.96円が視界内に捉えられることとなりそうだ。 なお、週足の観点でいえば、90.20円レベルに位置する一目均衡表の雲の下限をNYのクローズベースでも下回ってきたことは若干気掛かり。先週下回った週足・一目の雲の下限が今週はレジスタンスとして寄与することになるのかどうかにも注目してみたい。
一方、今週注目される要因は大きく2つ。 ひとつは、世界各地で予定されている政策的なイベントであり、幾つか例を挙げるとまずは24-25日に実施される米中戦略経済対話となる。ちなみに、こちらにはガイトナー財務長官やクリントン国務長官らも出席する予定となっている。また、ガイトナー財務長官は米中戦略経済対話の終了後その足で英独を緊急的に訪問する予定だ。英米あるいは米独の財務相会談の実施も見込まれているだけに、そこで如何なる協調姿勢などが示されるのかには大いに注意をはらいたい。 また、そのほかでは来日し日銀で講演を実施するバーナンキFRB議長の行動や、週末に実施される日中首脳会談などにも一応要注意。
いまひとつ注意を要したいものは、米国を中心とした株価動向になる。前段で指摘したように最近は株価と為替市場の連動性は高く、それもリスク回避の発想からか「株安=円高」という傾向が強く見られる。なお、同様のものをいまひとつ挙げれば、「ゴールド安=ユーロ高」の傾向もうかがえる。いずれにしても、金融市場は相互に支え合い複雑に絡み合っているマーケットであるため、単純に為替市場の価格変動だけでなく、株式や商品相場などほかのマーケットの値動きにも目を配る必要があるのかも知れない。
最後にそれらとは別に注意しておきたい要因は、不穏な空気が漂う北朝鮮情勢。とくに韓国とはいわゆる南北貿易が停止される旨の報道が出たりするなど、ジワリと緊迫したムードが高まってきた。最近の地政学リスクは、戦火を浴びるとの懸念からか地理的に近い国の通貨が売られる傾向もあるため、それからすると北朝鮮情勢は今後思わぬところで円売り要因になる可能性もある。
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